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君が目覚めるその時に
第2章 琉華
「浜岡さんは若くて美人だから」
「浜岡さんはスタイルがいいから」
「浜岡さんは悩みなんてないんでしょ?」

――これらは琉華の婚約が社内の人間に知られた時に周りから寄せられた反応だった。

「久遠課長をおとすなんて、さっすがー!」
「久遠さんの実家って資産家なんでしょう?しかも次男坊なんて、もう最高のタマノコシじゃない!」
「いつオメデタ退職しても問題ないなんて羨ましいわ〜」

お祝いどころか女子特有のイヤミともとれる言葉の数々は琉華をマリッジブルーへと誘うようで、ここ最近は頭が痛かった。

(…はぁ…明日は休みで良かった…)

やけに長く感じた一週間が終わるという金曜日、琉華は表参道へと向かっていた。
明日の土曜日は「私が結婚式のドレスを見立ててあげる!」と張り切っている未来の姑に着せ替え人形にされる予定になっており、その前に以前から気になっていたウェディングドレスのブランド店で自分好みのドレスを見ておこうと一人やってきたところだった。

(一生に一度…たぶんね…の女の子の一大イベントだもの!出来れば私の気に入ったものを着たいな…)

肩にかけた大きめのカバンの中には自分が着たいイメージのドレスをプリントしたものを数枚入れてある。
琉華はそれらを思い出しながら、ドレスにはどんなアクセサリーが似合うだろうかと頭の中で想像しながら歩いていた。
と、突然、目の前に何かが突き出され、琉華は慌てて足に急ブレーキをかけた。
「きゃっ」
「あ!スミマセン!」

あまりに驚いてしまった琉華は無意識に目の前に手を突き出してしまい、謝ってきた声の主が差し出していたものを払い落としてしまった様になり、一層慌ててしまう。

「あっ!ごめんなさい!落としてしまって…どうしよう…」
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