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ハッテンlove
第2章 姫野のバスケ
なんでこの子がモテないかわからない、なんてあの時は思ったけど。
今ならわかる。そりゃモテないね。

「ちょっと、近藤。ダルいんだけどー」
「適当にしてよー、もうー」

ホームルーム中。
女子から罵声を浴びているのは、近藤寛人(こんどう ひろと)。
体育委員である彼は、球技大会に出るメンバーを集うためにホームルームの司会をしているのだが。
とにかく行動がダルい。女子が苦手なのか、絡まれるとしどろもどろ。
挙動不審になる。

いくら顔の造作が整っていたとしても、彼はオシャレとはお世辞にも言えない容貌。
ノリもセンスもテンポも悪い。
これじゃ駄目だね。少しくらい顔が悪くても、ノリがいい男がモテるというのがこの世の定説だ。


僕との夜は、あんなに積極的なのにね…。

そう。彼こそが、今一番のお気に入りのセクフレ。
あの時の童貞ノンケくん。

僕との初体験の後、彼とは週末必ず逢瀬を繰り返した。
携帯番号とメアドを交換。僕は「ヒメ」としか名乗らなかったけど、彼は気まじめにフルネームを教えてくれた。
聞かなくても知ってるけどさ、名前なんて。だってクラスメートだし。

でも彼は僕が…というより「ヒメ」がクラスメートだなんて知らない。
だって…僕はこの美貌をもっさりとしたヅラで顔半分まで覆い、分厚い眼鏡をかけている。いわゆる変装ってヤツ。

このクラスで、同じ化学部員で僕のパシリである、二宮悠真(にのみや ゆうま)を除いては誰も僕が美貌の持ち主なんてことに気づきもしない。


僕は亡き母の遺言により、このもっさり変装で15年間過ごしてきた。
容姿どころじゃない。明晰な頭脳を持ちつつも、わざと手を抜いて成績を目立たないようにしてきたし、運動神経抜群なのに、体育は身体が弱いと嘘をついて見学。

とにかく母は僕が目立つことを執拗に嫌った。泣きそうな顔で、幼い僕にヅラを被せたのだ。
その母の顔が忘れられず、僕は目立たない様に顔を隠し、出来ることも出来ない振りをしてきた。
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