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ハッテンlove
第5章 友達
東の空が段々と明るい光に包まれた頃。
僕はようやく山を抜け、田園風景が広がる舗装路に出ることが出来た。

田んぼを抜けたら民家がある。
でもいったいここはどこだろう?

足を引きずりながら歩いていると、向かい側から若い男がジョキングをしているのが見えた。

途中、木の枝で肌を切られたり、転げ落ちてすりむいたりしたから、いたるところが傷だらけの泥だらけ。
ガイジン美少年が傷だらけとは。なんかみじめな姿…。

俯いて足を引きずるように歩いていたら、手前でそのジョキングの足音が止まった。

「姫野!?」

顔を上げると、そこには二宮くん。

「なにしてんの姫野!?なんでそんなに泥だらけの血まみれなの!?」

二宮くんは驚愕のあまり固まってる。しばらく僕が黙っていたら、僕の前で屈んだ。

「とりあえず、おんぶしてあげるから。俺の家まで行こう。すぐ近くだから」
「……」
「早く早く」

促されたから二宮くんの背中にしがみつく。僕という重しを背負いながら、もと来た道を引き返す。
そうか…。ここは二宮くんの家の近くなのか。ということは、近藤くんの家も近い。

サバイバルを抜け、知り合いに会えたからなのか、ぽろりと僕の目から涙が零れて溢れてきた。
怖かった…。

泣いている僕を背負いながら、二宮くんは無言だった。

住宅地に入ると、犬の散歩をしている人達とすれ違う。そのうちの一人、柴犬を連れた華奢な女の子が二宮くんに目を留めた。自然と視線は背中の僕に向かう。泣いているのを見られるのが嫌だから、肩に顔を埋めた。

「おはよ…」
「おはよ。ごめん、急いでるから」

女の子の挨拶に余裕のない声でそう返すと、二宮くんはオシャレな一軒家の前で僕を下ろした。そして門を開けると僕を手招きする。

「ここ俺んち」

僕を先に家の中に入れてくれた。

玄関のど真ん中に、黒い猫がでかい顔して座っている。二宮くんが「ランマル、お客さん」と言うと、僕の方を向いて「ミャア」と啼いた。

猫が僕の足元にすり寄ってくる。その温かさを感じていたら急に眠く…。

「二宮くん…僕……眠……」

そういや、一睡もしてなかったっけ。
いきなり上がり込んだ人の家でなにやってんの?って感じだけど。

僕は崩れ落ちるように玄関で意識を失ってしまったのである。


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