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人妻愛人契約
第14章 消せない記憶
4月、桜の開花とともに祐樹と希実の身辺は慌ただしくなった。

まず希実が旅館組合の広報室長を辞任した。後任には沙耶が就き、コスプレフェスの業務も沙耶が引き継ぐことになった。希実はフェスにはひとりのプレイヤーとして参加することになり、広告代理店との打ち合わせで東京に行くこともなくなった。

組合の活動年度の半ば、しかもコスプレフェスを4ヶ月後に控えての辞任に対し、他の旅館の旦那衆や女将たちからいろいろな声が出たが、希実は一人ひとりに丁寧にお詫びしながら、新しい事業のため、と理由を説明してなんとか乗り切った。

しかもさすがに希実だ。何人かから、新しい会社が事業を始めたら、ぜひ顧客管理システムを使わせて欲しいというオファーまでもらってきてしまった。

「すごいね」

祐樹は舌を巻いた。

「へへへ」希実はドヤ顔で祐樹を見た。「システムの中身がいいからよ。みんなウチや三河屋さんが祐樹のシステムを使って業績を上げてるのを知ってて、使ってみたいと思ってたんだって」

「みんなに使ってもらえると嬉しいな。東ノ沢温泉をモデルケースとして売り出せば、新会社のいい宣材になるだけじゃなく、東ノ沢温泉にとってもいい広報になる。一度、羽鳥さんに話してみようかな」

「そうしてみて。わたしは沙耶さんにはちょっと話づらいけど……」

「大丈夫。そこはムゲンの営業部隊にやってもらうようにするから心配することないよ」

「うん。そうしてもらえると助かる」

希実は良泉館の女将の仕事と新会社設立のサポートに集中した。前にも増して働いた。そのがんばりと、祐樹が開発したシステムの効果により、善一のサポートはなくなったが、良泉館の業績は落ちることなく、順調に伸びていった。

一方、祐樹の新会社は、GSシステム&コンサルテーションと名付けられた。GSは、Good Spring(良い温泉)の頭文字を取ったものだ。

祐樹は良泉館の社長を務めるかたわら、新会社の共同経営者としてシステム開発を担当することになった。星奈は、三河屋を辞め、GSシステム&コンサルテーションの第一号社員となった。

いろいろあったが経営者としての善一は冷静に顧客管理システムを評価し、引き続き使うと言ってくれた。GSシステム&コンサルテーションの最初の顧客会社となった。

仕事ということでは、二人はまずまずの再スタートを切ることができた。
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