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人妻愛人契約
第14章 消せない記憶
「最低っ!」

希実は泣いていた。美しいアーモンド型の目から大粒の涙がポロポロと零れていた。

はっ――。

祐樹はようやく我に返った。

僕は希実さんになんてことを言ってしまったんだろう――。

心の中を支配していた悪魔が消え去り、後悔の感情が広がっていく。

「希実さん、ごめん……」

祐樹は希実を抱きしめようと手を差し出した。

「近寄らないでっ!」

希実は後ずさりながら、祐樹の手を払った。

「大嫌いっ! 祐樹なんて大嫌いっ!」

希実は悲鳴のように叫ぶと、身体を翻し、事務所のドアを勢いよく閉めて、かけ去った。

「希実さん……」

祐樹は、崩れるように椅子に腰を下ろした。股間のモノはさっきまでの勢いが嘘のように元気を失い、柔らかくなっていた。

「僕は何をしてるんだろう……」

魔が差したとしか言えない。それでもあれは本当に言ってはいけなかった。善一の子どもが欲しいんだろうなんて。

たぶん自分が一番恐れていることが言葉として出てしまったに違いない。それは自分自身の弱さだ。

後悔ばかりがどんどん強くなっていく。

「ごめんなさい……」

祐樹は、両手で顔を覆った。指の隙間から涙が溢れてきた。それが雫となって、裸のままの太腿にぽたぽたと落ちていった。
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