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第1章 10億の借金

ふと前を見ると、浴衣姿の若い女性が二人、頭を突き合わせるように広げた地図を覗き込んでいた。

一人は女の子らしいピンク色の地に淡い水玉模様の浴衣。もう一人は白地に紫陽花が描かれた浴衣。両方とも、いかにも若い女性に人気が出そうなデザインだった。

「どっちに行けばいいのかしら……」

ピンク色の浴衣の子は、ときおり地図から顔を上げて辺りを見回している。白い浴衣の子は、じっと地図を睨んだままだった。

「どうかされましたか？」

祐樹が声を掛けると、二人は同時に顔を上げた。

突然若い男に声を掛けられたからだろう、ちょっと警戒するような目つきをしたが、優しそうな顔立ちと、きちんとスーツを着ているのを見て、大丈夫と思ったようだ。手にした地図を差し出してきた。

「ここに行きたいんですけど」

真ん中から少し左にある星印を指した。

「ああ、湯遊亭（ゆあそびてい）さんですか。だったら、そこの赤い橋を渡って、２つ目の角を右に曲がったところにあります」

「向こう側なんですか……。ありがとうございました」

二人はニッコリと微笑んだ。