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人妻愛人契約
第15章 新しい夫婦のかたち
祐樹と希実が良泉館に帰り着いたのは、夜の8時を回ってからだった。
事務所では、慎吾が心配そうな顔で二人を待っていてくれた。二人は交互に慎吾にお詫びとお礼を言って、母屋に引き上げた。
「今日は、あまり客は入ってません。旅館のほうは心配しないで、ゆっくりお休みになってください」
二人の背中に慎吾は優しく言葉をかけてくれた。
母屋に戻っても愛未はいない。二人はやることもなく、キッチンのテーブルに向かい合って座っていた。無言のまま相手から声をかけてくれるのを待っていた。
どのくらいそうしていただろうか。
「希実さん、ピルはもらったの?」
祐樹が先に口を開いた。
「……うん、もらった」
希実が答えた。
「飲んだの?」
「……まだ」
「飲まないの?」
「……飲んだ方がいい?」
希実に聞き返された祐樹は、しばらく考え込んだ。
自分の頭の中もグチャグチャになってるが、きっと希実の頭の中はもっとグチャグチャなってるんだろう。心も。
「三河屋さんの子どもができてもいいなら、希実さんが三河屋さんの子どもを欲しいなら、飲まなくてもいい」
祐樹は言った。
「もし子どもができたらどうするの? わたしと離婚するの?」
「しないよ。するわけないだろう。僕の子どもという可能性もあるんだ。希実さんが産むと言うなら、自分の子どもとしてちゃんと育てるよ。それとも希実さん、僕と別れて三河屋さんと一緒になりたいの?」
希実は首をブルンブルンと横に振った。
「ありがとう、祐樹……」
希実は、目に溜まった涙を指で拭いながら席を立ち、コップに水を汲んだ。バックから薬を出して飲んだ。
事務所では、慎吾が心配そうな顔で二人を待っていてくれた。二人は交互に慎吾にお詫びとお礼を言って、母屋に引き上げた。
「今日は、あまり客は入ってません。旅館のほうは心配しないで、ゆっくりお休みになってください」
二人の背中に慎吾は優しく言葉をかけてくれた。
母屋に戻っても愛未はいない。二人はやることもなく、キッチンのテーブルに向かい合って座っていた。無言のまま相手から声をかけてくれるのを待っていた。
どのくらいそうしていただろうか。
「希実さん、ピルはもらったの?」
祐樹が先に口を開いた。
「……うん、もらった」
希実が答えた。
「飲んだの?」
「……まだ」
「飲まないの?」
「……飲んだ方がいい?」
希実に聞き返された祐樹は、しばらく考え込んだ。
自分の頭の中もグチャグチャになってるが、きっと希実の頭の中はもっとグチャグチャなってるんだろう。心も。
「三河屋さんの子どもができてもいいなら、希実さんが三河屋さんの子どもを欲しいなら、飲まなくてもいい」
祐樹は言った。
「もし子どもができたらどうするの? わたしと離婚するの?」
「しないよ。するわけないだろう。僕の子どもという可能性もあるんだ。希実さんが産むと言うなら、自分の子どもとしてちゃんと育てるよ。それとも希実さん、僕と別れて三河屋さんと一緒になりたいの?」
希実は首をブルンブルンと横に振った。
「ありがとう、祐樹……」
希実は、目に溜まった涙を指で拭いながら席を立ち、コップに水を汲んだ。バックから薬を出して飲んだ。