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人妻愛人契約
第16章 一年前の春
「ところで理事長、私にどのような御用ですか?」

「お前、この間、俺の店で、希実を抱けるなら死んでもいいって叫んだそうだな」

「お耳に入りましたか。いい年こいて、お恥ずかしい話で。酔っぱらってつい」

男は頭をかいた。

「その気持ち本当か?」

「もちろんです。前から抱いてみたいと思ってましたが、人妻になった姿を見て、その思いが一層強くなりました」

「そうか、だったら、俺と組まないか。言うとおりにすれば、あの女を抱かせてやるよ」

「本当ですか?」男は疑わしそうに善一の顔を見た。「それが本当なら、私は何でもしますけど、でもどうやって」

「ちょっと耳を貸せ。それはなあ……」

男は頷きながら善一の説明を聞いている。その目は卑猥に輝いていった。

「……ということだ」

「なるほど。でも、希実さんは真面目ですからね。気も強い。果たして上手くいくか……」

「だから面白いんじゃないか。おのお高くとまったお姫様を俺のモノでメロメロにしてやるよ」

善一はニヤリと笑った。

狂気にかられた犯罪者のような不気味な笑顔。

それを見た男は怖気が走ったようにブルッと身体を震わせた。

「わかりました。やりましょう。そんなことで希実さんを抱けるなら安いもんです」

男は大きく頷いた。

「そうか、やってくれるか」

善一は、嬉しそうに声をあげると、視線を再び外にいる希実に戻した。

「待ってろよ。今にヒイヒイ言わせてやるからな」

その目は、もう希実をものにできたというかのように、淫らな光を放っていた。
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