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お天気お姉さん~明日、晴れるかな~
第9章 夫人会の帰りにて
夫の久が自分の留守中にメイドの幸恵を抱いているとも知らず、
妻の瑠璃子は下着メーカーの企業者の夫人たちで結成された「夫人会」の会合に参加していた。
海外旅行から帰国した直後なので
全身がクタクタだったけれど
うっかり欠席でもしようものならどんな陰口を叩かれるかわかったものではなかったので、体力的にかなり無理して参加した。
会合とは名ばかりで
何のことはない起業家の暇な奥さま達の茶話会のようなものだ。
元来、甘党ではない瑠璃子にとって
目の前に差し出されるスィーツの数々は拷問にも似ていた。
夫人会の会長である下着メーカー最大手企業の
社長夫人が見栄と虚飾に満ちた訳のわからないスィーツが
瑠璃子の目の前にどんどんと運ばれてくる。
参加者の各企業の奥さま連中は
会長の選りすぐりのスィーツを口に運び
「これは絶品ですわ」とか「さすがに奥さまでいらっしゃる、このようなスィーツをご紹介していただいて光栄ですわ」だのと
聞くにたえないおべんちゃらの数々のセリフが飛び交っていた。
瑠璃子も神輿を担ぐ一人として
好きでもないスィーツを渋々口に運んで
会長の機嫌を取る言葉を発しようと思うのだが
疲れと相まって、好きでもない甘ったるい味に閉口してしまう。
「あら?エロエロジャパンの奥さま?
お口に合わなかったかしら?」
一人だけ気分の乗らない表情をしているのを咎めて
会長はキツい口調で話しかけてくる。
まるで「美味しい」と言わなければいけない雰囲気に瑠璃子はいたたまれなくなる。
「いえ、とんでもございません
とても美味しゅうございますわ」
会長の鋭い視線から逃げるように
瑠璃子は無理してスィーツを口に運んで作り笑顔で誤魔化した。