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お天気お姉さん~明日、晴れるかな~
第14章 還暦女が掴んだ幸せ

浅香家のダイニングに久々に幸恵の手料理の朝食が並べられていた。

「これだよ、これこれ、
やっぱり幸恵の味噌汁の香りを嗅がないと一日が始まる気になれないな」

浅香家の主人である久は
着席するとご飯の給仕をしてくれる幸恵の顔を見つめながら満足した。

「あら、それじゃあ、私の作る朝食が不服だったみたいじゃない」

久と対面に着席した妻の瑠璃子は頬を膨らませた。

息子の準が下着モデルとして目をつけた女が
グラビア撮影の旅行で家を留守にする時に
まかないがいないと不便だからと幸恵を連れ出してしまったので、その間は新婚に戻った時のように
せっせと妻の瑠璃子が久の食事の用意をしてきた。

「いや、そんなことはないよ
瑠璃子の手料理も懐かしい味がして旨かったさ
でもね、長年こうして幸恵に食事の用意をさせてきたから、僕の舌は幸恵の味付けに馴染んでしまっただけだよ」

せっかく自分の手料理を誉めてくれているのに、
当の幸恵は浮かぬ顔をしていた。

食事の間も、いつもなら口喧嘩を始める夫婦の仲裁役を買って出るのに、
この日ばかりは夫婦が細かいことで言い合いをしても、心ここにあらずという感じで夫婦の会話にしゃしゃり出る事もなく、黙々と食事の後片付けをし始めた。

「どうした?幸恵、体の調子でも悪いのかい?」

いつもと違う雰囲気に久は怪訝そうにそう尋ねた。

「いえ…いたって健康でございます」

そう、体は何時も以上に元気だった。
だが、元気すぎて体の奥が疼いて仕方無かった。

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