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月の裏で会いましょう-revised-
第2章 初めての夜
「お姉さん、ひとりでそんなに食べるの?すごいね」
男はカウンターに片肘をついて話しかけてきた。仕草から、自分の容姿に自信があることがうかがえた。遊び慣れた風だ。
カジュアルだけど高級そうなスーツの下にはブランド物と思われる真っ白のTシャツ。きらりと光る腕時計。身に着けているものすべてがファッション雑誌に載っていそう。
野性的な香りの香水を纏ったその男は、大人の色気が滲む、と言えるのかもしれないけど、私にはいやにギラついた気障(きざ)な男にしか見えなかった。
「ええ、ここのお店はなんでも美味しいから、全部食べます」
私は言って、会話を終わらせようと男から目をそらした。