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月の裏で会いましょう-revised-
第21章 月の裏側へ(2)
「それから、星空の下で彼女をまた、抱いた。キレイだった」
「星空の下で…」
星を見上げながら、私は途方もない孤独に襲われた。この星空の下で、昴とその人は愛し合った。私と言えばこの広大な星空に包まれて、完全に一人だった。
私は立ちあがった。
「半日しか働いてないのに、もう疲れちゃった。私、寮に戻るね。昴くんはここに泊まるんだよね?」
「グリーンヒル棟。一番上の鬱蒼とした場所の端っこ」
「そう。長旅で疲れたろうから昴くんもゆっくり休みなよ。おやすみ」
私は踵を返してその場を立ち去った。昴の視線を背中に感じながら、寮の方向に速足で歩く。
昴があんな風に私を見るなり泣きじゃくったのは、なぜなのか。何のために昴はわざわざ私のもとにやってきたのだろう。
私の体調を確認するため?ならばなぜ、恋人とのことを話して聞かせるのだろう。
まさか姉が、弟の話に刺激されて深い闇のような孤独感に苛まれているなんて、みじんも思っていないだろう。弟の幸せなのろけ話が聞くに堪えないなんて、私は姉失格だ。