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月の裏で会いましょう-revised-
第21章 月の裏側へ(2)

一口飲むと、コリアンダーの香りが鼻腔をくすぐった。
直後、オレンジの爽やかで甘い香りが口の中いっぱいに広がる。柔らかな苦味とともに喉に流れ込んだ液体が、瞬く間に私の心臓の鼓動を速めて血流を促した。




その時、波打ち際で足を取られた時のように、私の体が過去の記憶に引き込まれていった。




目を閉じると、ビールの香りの向こうに柔らかな景色が浮かんだ。



グラスの中で淡い金色に光るベルジャンホワイトと、その向こうで照れ臭そうに笑う昴の顔。


薄暗い部屋で狂ったように抱き合って、恍惚の表情を浮かべる昴。
再会した時、不意をついてキスをよこした時の、いたずらっぽい昴の顔。
トラックの荷台で抱き合って見上げた星空。
激しい土砂降りの雨。
私のお腹の傷跡を舐める昴の舌。
昴のバイクの後ろに乗って肌を撫でる風。
熱くて柔らかく、湿った昴の肌。
頬にかかる吐息。甘く抓る指先。
私の潤みの中で、たけり狂う昴のもの。

胸の鼓動が収まらない。顔が熱くなり、涙が噴き出るように零れてしまう。

「昴、私たちは…」

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