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一夜限りでは終わりたくない
第2章 曖昧な関係
車は会社の地下駐車場で止まった。
私が車から降りようとした時、藤堂副社長が後ろから声を出した。
「今日の午前中に秘書がお前の所に行くから、一緒について行け…悪いが俺は会議で行かれないが、全ては指示してある。」
「それは…どういう事でしょうか?」
私は意味が分からず質問するが、藤堂副社長はそれ以上何も言わずに秘書たちと歩いて行ってしまった。
それから1時間くらいたった頃、私は自席でメールチェックなどをしていると誰かが後ろから私の名前を呼んだのだ。
「桜井さん、少しお時間よろしいでしょうか」
私が驚いて振り向くと、そこに居たのは先程、藤堂副社長にスケジュールを伝えていた秘書の男性と、もう一人若い男性が立っていた。
驚いた表情の私に秘書の男性は無表情で話し始めた。
「私は藤堂副社長の秘書を務める早川と言います。そしてこちらが同じく秘書課の一ノ瀬です。これから一ノ瀬が桜井さんをご案内します。藤堂副社長からのご指示ですので、どうぞご同行ください。」
すると、一ノ瀬はニコッと感じの良い笑顔を見せた。
秘書課とはあまり交流が無いので知らないが、恐らく年下だろう。
アイドルのような可愛い男の子だ。
「桜井さん、よろしくお願いしますね。では参りましょうか。」
「あ…あの…どこへ行くのですか?」
私の問いに答えたのは早川だった。
早川は片眉を上げて話し出した。
「詳細は後程一ノ瀬が話しますので、とにかくお急ぎください。」
全く分からないが、早川から少し怒り口調で言われ、思わず立ち上がり一ノ瀬に付いて行くしかなかった。