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血ダマリ美青年の狂気愛
第3章 拘束絶頂
少女は部屋の外を知らない。
これまで診察の時だけは、外に出る機会があった。ただ彼女は必ず目隠しを当てられた状態で研究員に手を引かれていた。
それは、常人より優れた彼女の視力は、多くの情報を与えすぎると脳へ負担をかけてしまうから。それ故の、彼女を守るための処置だった。
でも今は……少女は部屋から逃げるしかない。
背後の青年への恐怖が、彼女を外の世界に押しやった。
「………ぅ…!」
ドアの先──そこは、青年が現れた、あの血溜まりの惨状。
「ひ、酷い…」
首をかき切られて倒れているのは、見知った研究員の男だ。
壁にもたれるように倒れている男も
こちらに手を伸ばし、うつ伏せている女も
みんな、この朝まで変わりなく元気だったのに。
「うっ…うう…なん で」
少女は苦しそうに頭をかかえ、鼻と口を手で覆った。
薄暗いのに鮮やかな赤が、彼女の脳を攻撃してくる。
通路いっぱいに広がる血の匂いも息ができないほど生々しい。
遠くの部屋で鳴る警告音も、彼女にとっては頭が割れそうな慟哭( ドウコク )だった。
気を失ってしまいそう
だけど
「…逃げるの?あんたが逃げるなら、俺は追いかけるけど」
「……!」
「追うし…逃がさないけどな?」
「…ひっ」
背後から、不気味に落ちついた声でそう言われる。
さらに相手が立ち上がる気配がわかった。悠長に気絶していられるものか。
“ だれか助けて ”
少女は走った。
通路の先には、機材やモニターが並んだ広い部屋があり、そこにも白衣を着た研究員の動かない身体があった。
ひとつのモニターが何かの映像を流している。
それが何の映像なのか見る余裕はなかった。