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君とメメント・モリ
第18章 死神の秘密
「君、それを知っていて彼女を助けたんじゃないのか」
翼の息が止まった。
凛が足を滑らせた瞬間の、稲妻のような後悔。あの思念は、凛の両親が死に際に発した生への執念とよく似ていた。
あの二人を送り出した時に感じた後ろめたさを無意識に思い出し、とっさにその娘である凛を、助けてしまったのかもしれなかった。
「死の直前の両親の感情を知っていた君は、娘をこんなことで死なせるわけにはいかないと、思ったんじゃないか」
岸辺はまっすぐに翼を見つめた。
「翼くん。君がどれだけ凛さんに固執しているかはよく分かった。でも、人間としての生が与えられた限られた期間の中で、やれるだけのことをやるしかないよ。すべての人間たちがそうしているようにね」
岸辺は黒く染まる夜空を見上げた。
「申し訳ないがこれから僕は忙しい。東京で三日後、トンネルが崩落して電車事故が起きるんだ」
岸辺は言うと、河原を歩いて行った。カラスの群れが方々に羽ばたきながら、岸辺の動きに合わせて上空を移動していった。
翼の息が止まった。
凛が足を滑らせた瞬間の、稲妻のような後悔。あの思念は、凛の両親が死に際に発した生への執念とよく似ていた。
あの二人を送り出した時に感じた後ろめたさを無意識に思い出し、とっさにその娘である凛を、助けてしまったのかもしれなかった。
「死の直前の両親の感情を知っていた君は、娘をこんなことで死なせるわけにはいかないと、思ったんじゃないか」
岸辺はまっすぐに翼を見つめた。
「翼くん。君がどれだけ凛さんに固執しているかはよく分かった。でも、人間としての生が与えられた限られた期間の中で、やれるだけのことをやるしかないよ。すべての人間たちがそうしているようにね」
岸辺は黒く染まる夜空を見上げた。
「申し訳ないがこれから僕は忙しい。東京で三日後、トンネルが崩落して電車事故が起きるんだ」
岸辺は言うと、河原を歩いて行った。カラスの群れが方々に羽ばたきながら、岸辺の動きに合わせて上空を移動していった。