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カゴノトリは貴方の腕の中で鳴く
第9章 湯の花温泉

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本日のお宿には…、
鴨川沿いの料亭から
車で移動して50分程…で着いた。

京都の奥座敷とも呼ばれている
亀岡市にある湯の花温泉の
山間の風景の中に溶け込む
一軒の温泉旅館だった。

運転手が建物の前のロータリーに
車を停めると、旅館の仲居さん達が
ずらっと…玄関の所でお出迎えをしていて。

初めて…直哉様のお屋敷に
連れて来られた時の事を思い出す。

『直哉様お帰りなさいませ…』

『『『お帰りなさいませ』』』

いらっしゃいませ…じゃなくて、
お帰りなさいませと出迎えていて。
まるでこの旅館が直哉様の
別荘か何か…みたいにも感じる。

「今日も世話んなるわ」

『それでは…、お部屋にご案内致します』

仲居さんに案内されて、玄関で
履物を脱ぐと。こちらが致しますのでと
下駄箱に履物を自分で入れなくていいと
そう別の仲居に声を掛けられた。

玄関は広々とした畳敷になっていて、
その先には…こじんまりとはしているが
お洒落で洗練されたロビーラウンジがある。

普通なら…ロビーのフロントで
チェックインの手続きを…、
するもの…だろうと思うのだが…。

フロントを無視して…そのまま
仲居さんに客室まで案内される。

……今日一日…あちこちに行ったけど、
どこに行っても…直哉様は
VIP待遇…だなぁと…思ってしまう。

『こちらのお部屋にございます…』

この旅館は3階建てで、
3階の奥にある客室に案内された。

仲居が客室のドアを開いて。
中に入る様に促される。

入口の…部分もかなり広いスペースで
ここがこれだけ広いのだから、
今はその姿が見えないお部屋も
きっとかなり余裕の広さなんだろうな…。

『奥に、どうぞ…』

そう言って廊下を歩いて、
通されたのは12.5畳の
ここだけでも4~5人は
泊まれそうな広さの和室だった。


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