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カゴノトリは貴方の腕の中で鳴く
第9章 湯の花温泉

和室の中央には机が置かれていて
その机を挟んで座椅子が置かれいるのだが。

こう…今まで見た事無い様な…、
背もたれの部分がラタンで
自然に身体にフィットする様な
型になっているお洒落な座椅子で。

置いてある座椅子1つにしても
お洒落でモダンな印象を受ける。

『どうぞ…お掛けになって
お寛ぎになって下さい。
すぐにお茶の方…お持ち致しますので』

上座の座椅子に直哉はすでに
座って寛いでいて。
和室の入口で立っていた私に
仲居さんが声を掛けて来て。

すいませんと頭を下げながら
直哉が座って居る向かい側の座椅子に
一花は腰を降ろした。

視線を何だか感じて、
私を見ている…??と思っていたら
私が今着ている振袖を見ている様で。

お昼間の舞妓さん達も…、
やたらに…着物を”ええやつ”と
褒め讃えてくれていたが…。

『あ、やっぱり分かってまう?ええ着物やろ?』

『でも…いつもの直哉様からは
あまり…想像も…出来ないと言いますか
お珍しい…と…も、思ってしまいまして…』

『ああ、それ…ってあれ?
今日頼んだこの部屋の事言うてんの?
ええやん……俺かて…、
そんな気分な…事もあんねん…って』

この…着物と…、
今日泊まるこの部屋は…
直哉にしては珍しい…と…
直哉様のここでの”いつも”を
良く知っている仲居さんからすれば
”珍しい”事…な様で…。

その”いつも”はどうなのかを
全く知らない私には、
何がどう…”珍しい”のかも…
全然…見当も…付かない…って言うのが。

現実…なんだけども…。

座って寛いでいると、
別の仲居さんが…お茶を運んで来て。

普通お部屋でお茶を淹れてくれる
そんなイメージなんだけど。
目の前に出されたお茶を見て
ああ、と納得してしまった。

お盆が…目の前に置かれて
お抹茶と…旅館のオリジナルの栗きんとん。
それから…和紙に包まれた
和三盆が…一緒に添えられて居て。

「お抹茶……」

『宇治の…厳選した契約農家で
育てられている抹茶でございます…』


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