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カゴノトリは貴方の腕の中で鳴く
第9章 湯の花温泉
『なんや…、寝付けへんのかいな?』
何とかして寝ようとしていると、
直哉がそう声を掛けて来て。
「す…すいません…」
『そないに…明日が楽しみなん?
遠足の前の日の子供ちゃうんやで。
ちゃんと…連れってったるさかいに、
さっさと…寝ぇな…』
そう言って布団の上から
身体をトントンとされてしまって。
子供扱いされてしまったのだが。
直哉様から見れば…、高校を
卒業したばかりの私なんて…
子供…みたいな物…なのかも知れない。
「子供…じゃ…ありません…」
『18なんて、まだまだ
世の中の事なんか…何にも
分かっとる様で分かっとらへん…で。
尻の青い青い、子供みたいなもんやん』
それは…何となく…
私に向けた言葉…と言うよりは
直哉が過去の自分に向けた、
そんな言葉の様に聞こえた…。
『大人…なんかなっても
なんもええ事なんてあらへんで?
大人なったら大人なったらで、
子供の頃が良かったなぁ思うもんやしな』
こっちに伸びて来た直哉の手が
わしゃわしゃと一花の頭を撫でて。
子供と言うよりは、猫か
犬か何かみたいに撫でられてしまった。
でも……その自分の頭を撫でる
そのぬくもりの心地良さに
それまで全然湧いてこなかった
眠気がどっと押し寄せて来て。
うつら…うつら…と
眠気に抗う事が出来なくなって来て。
そのまま…眠りの国に落ちてしまっていた。
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