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カゴノトリは貴方の腕の中で鳴く
第1章 はじまりは3月

『直哉様、こちらの…宝生様が
お持ちになられましたこちらの書面は
…正式な形式の書面では御座いませんので。
宝生様にはこのイズミより、
お帰りになられますよう、
お伝えをした次第に御座います』

『なぁ、イズミ。
そのさぁ正式やないちゅー書類って言う奴、
ちょと…それ、俺に貸してみてんや』

私から預かっていた書面を、
持っているイズミに対して
直哉と呼ばれた男が…手を伸ばして。
イズミが、その書面を
直哉と言う男に手渡した。

『こちらに御座います、直哉様』

「はい、どーもぉ、あんがとさん」

直哉…と言う男はその紙を受け取ると
その文章に目を通して、
おもむろに自分の懐に手を入れると
ペンを取り出してサラサラと
その紙に何かを書き足した。

そして…その…書き足した
文章の隣に…自分の名前を書き足すと
その隣に…自分の判を押す。

『どーも、おおきに。
ほな、これ…返すわ』

ピラッと…直哉がイズミに
その書類を返して。

グイっと…こっちの肩に
自分の腕を回すと、
自分の身体の方に直哉と言う男性が
私の身体を引き寄せて来る。

「あの…ッ」

『なぁ…ひとつだけ…聞いてええ?』

「……何でしょうか…?」

『自分さ…、処女なん?』

「えっ…、しょ……ッ」

カァアアアアァッ……、
処女と言う言葉に…
顔を…真っ赤にしてしまって。

質問に答える事ができずに、
私が…しどろもどろ…していると。

『あっはははっ、こらええわ。
自分…名前…なんやっけ?
アンタの事…気に入ったわ、
アンタの…その…神室寺家との約束…
俺が…叶えさせたるわ…
それでええやろ?アンタも、
アンタの家も…俺も…みぃーんな
Win-Winや、まぁーるく納まんで?』

「はぁ…」

私は…その人の勢いに…
圧倒されてしまって…居た。

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