この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
カゴノトリは貴方の腕の中で鳴く
第2章 直哉様のお屋敷
あっちに待たせてある…と
直哉が言っていた、
真っ黒の…車に乗せられて。
どれぐらいの時間が経っただろう?
私の気のせいでなければ
同じ所をぐるぐると
回っている気がするが…。
後部座席の窓はスモークがべったりだし
運転席との間にはカーテンがあるから
外の風景は全然中からは見えない。
御本家は…京都にあるが、
京都府の中なのか外なのか…
ここは一体どの辺りなんだろう…?
後部座席でふたり並んで座って居るが、
会話らしい会話も無い。
どうしよう 気まずい…。
『あかん』
そう…突然…隣に座って居た
直哉が…何かを思い立った様に言って来て。
『もう、あかん…、限界や』
「げ、限界って…何が…ですか?」
『眠い…、もう、寝るわ、俺』
ちょいちょいと…こっちに
直哉が手招きをして来て。
『んじゃ…直哉様から
自分への…初仕事な…?』
そう…言われて…『私』に、
直哉様が直々に与えて下さった。
その初仕事…の内容は…、
移動中の車の中で
彼の…、神室寺直哉の…枕になる事だった。
この人も…この人だ…、
イキナリ神室寺家に現れた
得体の知らない私を…
本物なのか偽物なのかも
定かではない…紙きれ1枚で
自分の元に引き取ると言ったのだから。
この人が…神室寺家の…時期当主…なら。
その…神室寺家の…人間の中に
彼が…神室寺直哉が当主になる事を
望ましく思って無い人間も…
多からず…少なからずは居るはずだ。
もしかしたら…私が…、
その…誰かからの差し金で…
彼の…懐に忍び込む事を目的にして
そんな『設定』で…近付いて来た
刺客…だとか…は…思わないんだろうか?
一花は自分の膝を枕にして、
穏やかな寝息を立てている
その人の顔をじっと…見つめた。
ゆっくりと…この…人の…、
神室寺直哉とか言う人の顔を…
改めて…じっくりと見てみた…けど。
「まつ毛…結構…長い…な…この人」