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淫夢売ります
第17章 淫らな紋章:堕ちる罪
☆☆☆
結論から言えば、あれから、私は眠らずに済んだ。少し休憩を取れたのもあり、歩き続けることができたからだ。よもや歩きながら眠ることはない。

15時、モルフェの扉の前についた。予定通り吉井くんもいる。
「桜井主任、一緒に俺も入りましょうか?」
言ってくれるが、私は断った。このあと、どんな展開が待っているかわからないが、ユメノとは夢の話をすることになるのは必然だ。そのとき、暗幕の外とは言え、吉井くんがいると、なんというか・・・恥ずかしい。

「大丈夫。ありがとう。これは貸しにしといて」
「何言ってるんスか、さっきの昼飯代でチャラですよ」
ひらっと手を振って、吉井くんは街に消えていった。あまり突っ込んで聞いてこなかった。今はそれがとてもありがたい。

よし、と私は意を決してモルフェの戸を開く。カランカランといつか来たときと同じ鈴の音が響いた。

「いらっしゃいませ」
暗幕の向こうから、軽やかな女性の声がする。ユメノだ。相変わらず薄暗い店内。そこかしこに飾られている星や月のオブジェが、最初に来たときよりも魔術的に見えてしまっているのは私がカードの魔力を体験してしまったからだろうか。

暗幕を上げると、先日と変わらない様子でユメノが座っていた。黒いサラサラのロングヘアに吸い込まれそうな漆黒の瞳、黒色の少し透けている感じがする質感のブラウスに、黒のロングスカートという出で立ちだ。

私を見て、ニッコリと笑う。

「これは、これは桜井様。本日は夢の追加購入ですか?」
その笑顔を見ていると、根拠はないが、「この人は私の夢の内容を知っているのではないか」という思いにとらわれる。全てを知って、なお、私をからかっているのではないかと思えてしまう。

「違うんです・・・。その、先日のカードのことで・・・」
私はモルフェのカードを取り出す。半裸の女性が艶めかしく踊る「淫紋」のカード。
「お気に召しませんでしたか?」
表情を曇らせ、ユメノは言う。この表情もなにか作り物臭い。
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