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淫夢売ります
第36章 鎖とドレス:軋む檻
「はい、できました。やっぱり・・・すごく良くお似合いですよ」
え・・・?嘘でしょう?

僕は目を見張る。
鏡の中の僕の顔はそれほどまでに変わっていた。眉は少し細く整えられ、アイラインを強調されてパッチリとした目はどういう魔法だろうか、可愛らしく見えてしまう。そして、頬のあたりはうっすらと紅色に彩られ、しっとりとした質感とふっくらした感じに仕上がっていた。唇には控えめだがルージュが引かれている。

「さあ、どうです?」
ふわさっと頭に被せられたのは、肩を超すくらいの髪のウィッグだった。若干茶色っぽい髪質で、顔色がより明るく映る。

「え・・・あ・・・こ・・れって・・・」
ふっと氷川の顔が僕の頬に密着せんばかりに近づく。鏡の中には、二人の『女性』が頬を寄せ合っている光景が見えた。

「すっごく可愛らしいですよ・・・竹内様
 いかがですか?
 こうして、体の外側も、内側も女の子になった気分は・・・。」

鏡の中にいるの・・・これって
そこに映る『女性』の姿をした自分に、胸の鼓動が高鳴ってしまう。

これが・・・これ・・・

そうだ、言っていなかったか?
あの店の、あのユメノという占い師は。
あのカードを買ったとき、言ってなかっただろうか?

『これが・・・あなたの欲望です』と。

ごくり、と息を呑む。
そうだ、違う・・・、違うんだ。

僕の欲望は、何もかも忘れたいとか、お尻で感じたいとか、そんなことじゃない。
違ったんだ。

氷川が背中から僕を抱きすくめるようにし、耳元に口を近づけてくる。

「さあ・・・次はドレスを選びましょう。
 それで、あなたは完全な・・・」

『女の子、ですよ』

その言葉が脳に落ちる。堕ちてくる。

そして、僕は、はっきりと理解した。
そうだ、僕の欲望は・・・

『女の子になって・・・犯されたい・・・』

僕は・・・私は立ち上がる。
氷川の手を取って。
行く先には、たくさんのドレスがある。

私を・・・女にしてくれる・・・素敵な・・・ドレス達が・・・。
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