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淫夢売ります
第37章 鎖とドレス:解放のドレス
撮られれば撮られるほど、世界に『私』が焼き付いていく。次第にこちらの自分の方が『本物』で、前は幻だったのかというような、そんな気すらしてきてしまう。

何枚目、もしかしたら何十枚目かもしれない。
かなりの枚数が撮られたと思う。そこで、宮下が背景を変えた。
今までの白ベースの背景から、黒を基調としたものになり、雰囲気が一変した。

「じゃあ、そろそろカラミいれたいんですけど・・・」
あ、っと気づいたように、宮下が氷川を見る。
「えっと、攻めアリ?」
「最初は女性からのほうが抵抗が少ないかと」
「ふーん・・・じゃあ、サキちゃんかな?ショウくんいれても?」
「どうでしょう・・・」
最後のところで氷川が意味深に笑った気がした。彼女らの会話の意味もわからないまま、二人のスタッフが新たに撮影室に入ってきた。

少し灰色かかった軽くカールした髪の毛で、黒ベースのゴスロリファッションを身にまとった女性がおそらく『サキちゃん』で、
前身頃の半分が黒、半分が少し模様の入った白色になっているシャツを着て、下にはクロップトップ、アンダーにはライトブラウンのゆったりとしたパンツを身につけている男性がおそらく『ショウくん』だろう。

「じゃあ、最初はサキちゃんと顔近づけて、キスする寸前みたいに」
サキの顔が私の顔に近づいてくる。ふんわり漂ってくる女性の良い匂い。近くで見ると、サキの肌はきれいで、目元を強調するメイクが、彼女に妖しい魅力を添えていた。

最初は頬に、
次は顔を見合わせて唇に、
触れるか触れないかの体勢。

際どい瞬間をシャッター音が切り取っていく。

視線が絡み合い、彼女の微笑みにどきりとする。

「じゃあ、ショウくん、後ろから竹内様を抱きしめて。胸を大胆に掴むように・・・それで、えっと、顔を少し上げさせて。それで、サキちゃんはそのままで、首筋にキスを」

ショウの手が背後から回ってくる。サキよりも熱い体温をドレス越しにも感じる。彼の方が私より背が高い。抱きすくめられ、のけぞるような姿勢になる。その剥き出しになった首筋にサキが舌を這わせる。

んっ・・・!

舌が少しだけ触れて、それだけでビクンと身体が反応を起こす。
サキの甘い体臭と、ショウの力強い抱擁で、私の身体は何かを感じ始めてしまっているようだった。
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