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淫夢売ります
第39章 仮面の夜会/二夜目:ダン・ル・テリエ
☆☆☆
ノワールが私の手を引いて、バル・マスケの一階を取り囲むような回廊に続く階段をあがる。二階はどうやらいくつかの個室があるようだった。部屋の上には金属製のプレートがあり、そこにナンバーが振ってあった。

「6」の部屋の前に立つ。

部屋の扉の右手には大きな窓ガラスがあり、部屋の中は外から丸見えの状態だった。窓の側には大ぶりで座り心地の良さそうなソファとローテーブルが据えられていた。

一体、どうしてこんな作りになっているのだろうか?
そんな疑問が私の脳裏をよぎった。

ノワールが先程の鍵で扉を開く。
中は茶色を基調とした壁紙と調度品がある少し広めのホテルの一室といった佇まいだった。オレンジ色の間接照明が部屋全体をほのかに照らしており、上品でありながらもどこか淫靡な気配を醸し出していた。

扉を入って右手にはクィーンサイズのベッド、その手前にはソファセットがあった。
しかし、その部屋が普通の部屋ではないことは、私にもすぐに分かった。
ベッドの奥に目をやると、そこにはX字型の磔台や天井から吊り下がった金属製の拘束具が見えたからだ。

「さあ・・・始めようか」

とん、とノワールが私の背中を押す。その手のひらの温かさにドキリとした。

「見てご覧」

彼に囁かれて後ろを振り向くと、先程まで誰もいなかったソファに、二組のカップルが座っていた。一組は、狐の仮面にタキシードの男と、赤色のドレスに赤い仮面の女性、もう一組は銀色のスパンコールが散りばめられた仮面をつけた男と黒に金糸を散りばめたおそらくは悪魔をモチーフにした仮面を被った黒い羽つきドレスの女性だった。
二組のカップルは、それぞれ思い思いのカクテルを飲みながら、ソファに座り、私達の方を見ていた。

その目に、淫らに濡れた好奇の色を感じたのは、おそらく気のせいではない。

「あ・・・れは?」
その光景を呆気にとられてみていると、私の手は力強く引かれ、部屋の奥に連れこまれる。いつの間にかノワールは上半身裸になっており、その逞しい胸部の筋肉を顕にしていた。

「彼らは、待ってるんだよ・・・ラビが、めちゃくちゃに犯されるのを」
その言葉に身を竦ませていると、私の服はあっという間にノワールによって剥ぎ取られてしまった。抵抗らしい抵抗なんてできないでいた。
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