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淫夢売ります
第10章 花と蜜:淫らな蜜
☆☆☆
確かにモルフェのカードは本物で、枕の下に敷いて眠ると、必ず淫らな夢を見ることができた。痺れるような快楽は癖になりそうだが、毎日使ってしまうと本当に身体がもたなさそうだから、数日に一度程度、使っていた。

淫夢のシチュエーションは毎回違うが、相手は必ず淳也で、そして、ふわふわと花の香が漂う中、激しく交わり、いつも私はあっという間に絶頂の峰に押し上げられてしまう。

夫の身体の感触も、アレの形も、何もかも現実そのままであるが、ただひとつ違うのは夢の中の夫があまりにも情熱的に私を求めてくることである。

その情熱に私はとろかされ、震え、感じてしまう。

もちろん、夢ではなく、現実の世界でも夫との夜の営みはある。
現実の夫はもっと穏やかで私の身体を気遣うような優しいセックスをする。それはそれでふんわりとした温かい気持ちになって好きなのだが、いかんせん夢の中の快感があまりにも強すぎるので、やはり物足りなさが募る。

花の香に酔うような陶酔感。
いつしか、淫夢を見て目覚めたとき、夫の横でこっそりと秘所を弄るのが習慣になってしまっていた。夢から覚めても身体が熱く、女の芯が疼いて仕方がないのだ。

☆☆☆
気がつくと、私は、スーツを着てオフィスの廊下を歩いていた。
あれ?何していたんだっけ?

「新城さん」
後ろから声をかけられる。営業の山本さんだ。
交通費の精算のことで質問されたので、答えると、「ありがっす」と若者らしい挨拶を残して去っていった。

ええと、私はどこに行くんだっけか?
なんだか覚えのあるような花の匂いがする。それでますます頭がボーッとする。

考えながら歩いていると、ぽんと人にぶつかってしまった。
あ、前、見てなかった。

「ごめんなさい」
慌てて頭を下げると、「亜紀ちゃん」と聞き覚えのある声。
顔をあげると、淳也だった。

「あれ?淳也は東支店に転勤したはずじゃあ・・・?」
私と淳也は社内結婚である。夫婦が同じ部署にいると何かと問題が発生する可能性があるからと、結婚後、淳也の方が支店に転勤になっていた。

「うん、今日は本社に届け物があってね。」
言うと、淳也が私の手首をギュッと掴む。キョロキョロとあたりを見回して、人がいないことを確認すると、そのまま腕を引き、そばにある給湯室に引き入れた。
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