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淫夢売ります
第11章 絡まる糸:意識する私
「その男性は、欲求の充足を妨げているわけです。この夢が意味するのは、現状に対する不満足とそれに対する解決、だと考えられます。なにか、満足が行かないことがあるのではないですか?」
なにかあるかしら?
「貴女は自分がどんな姿をしているのか覚えていませんでした。これは『歪曲』と捉えられます。もしかしたら、貴女はおよそ公道を歩くのにふさわしくない格好をしていらした、のかも知れませんよ」

ユメノがその真っ黒の目でじっと私を見つめる。
吸い込まれそうになる瞳から私は目が離せない。

「貴女は、夢の中で、本当に服を着ていらっしゃいましたか?」

ドキンとした。
もちろん着ていた、と言いたかったが、うまく言葉にできなかった。

「アイリさん、とおっしゃるんですね?
 もし、よろしければ、当店の別のサービスもご利用なさいませんか?
 人にはそれぞれ、人に言うことができない欲望があります。
 当店では、夢の中でその欲望を叶えるサービスがございます。
 夢の中なので、どのようなことをしても、何をされても、誰にも責められませんし、なんの責任も発生しません。
 自由に、欲望だけを満たすことができるのです」

ゴクリとつばを飲み込む。
私の・・・欲望・・・?

ユメノのぬばたまの黒に満ちた瞳がぬらりと光ったような錯覚を覚える。

「先程の夢で、何が『圧縮』され、どんな事実が『歪曲』されたのか?貴女の本当の欲望が何なのか、お知りになりたくないですか?」

そう言って、ニッコリと笑うユメノに、私はいつしかコクリとうなずいていた。
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