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女豹が雌猫に変わる時
第1章 本編
 視線の先では、挑戦者、松木綾乃が鋭い視線で不二子を見返していた。
綾乃は八重子と同じ様にキツめのショートスパッツタイプのコスチュームを身にまとい、ガウンを脱ぎ捨てた
臨戦態勢で仁王立ちしている。ショートウルフだった黒髪は
長く伸び、横顔を縁取るシャギーの部分を除けば、理沙子と死闘を繰り広げていた
あの頃そっくりになっていた。コスチュームの色も、コバルトブルー、
現役時代を彷彿とさせる。妖艶な雰囲気漂う顔つきは、小ぶりな唇が艶めかしい。
 必殺のサブミッション主体で試合を組みたてるのは、昔も今も変らない。
ただ、現在は試合形式に合わせ、一瞬でギブアップを奪う関節技より、相手を責め立て
いたぶる絞め技を重視していた。合わせて、観客を熱狂させる裏技も巧みに魅せる。
 髪型、コスチュームは昔を強く意識した作りだが、外観は不二子と同じ様に変っていた。
筋肉質で巨乳という、がっしりしていたイメージだったあの頃に比べ、
今は理沙子と同じ様に、熟した女の肉をボディにしっとりとまとっている。
 柔らかな肢体を豊満な色香で包み込こみ、かつてはスパルタンなイメージを与えていた
ツートンのリングウェアが、何処か淫靡な雰囲気を醸し出していた。
 変ったのは外観ばかりではない。
現役時代、弱点とされていた試合中のスタミナ、回復力は以前より格段にアップしていた。
何より、元々上手かった受け身に関してはベテランとしての円熟味を増して、どんなに
追い込まれていても一瞬で試合を切り返す、底知れない「受け」の強さを見せ付けている。
 以前は、総合面で不二子の後塵を拝する、と評され気味だった綾乃だが、現在は全くの五分
と言われていた。戦績もそれを証明している。
 FEMLINGのチャンピオンベルトが、二人の間を度々行き来しているのが
その証だった。
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