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きのうの夜は
第3章 揺れる思い

何故だか、自分でも分からないが苗字で呼んでいたのを覚えている。

「吉村さん、テニス教えてくれるの?」
「ああ、俺が教えてやるから大丈夫だ…」

それを聞いて私はテニスをやろうと決めたのだ。

「じゃ、今度の土曜日でも買いにこうか?」
「分かりました…」

そんな会話があり、私たちはテニスラケットを買いに行くことになった。
当時、夫の雅之は某大手量販店で販売の仕事をしていて、土曜日は殆ど仕事で家にはいなかった。

この日の朝、雅之を仕事に送り出す時、テニスラケットを買いに行くと言う話はしていなかったのだ。
もう、完全なセックスレス状態だったので、その頃はもうお互い会話もすることもなくなっていた。

どこのスポーツ用品店に吉村と買いに行ったのかは覚えていない。
多分、都内のスポーツ用品店だったのだろう。

吉村は店に着くと初心者向けのテニスラケットを紹介してくれた。
私は本当に初心者だったので、どこのどのラケットが良いのか分からないでいた。

「まぁ、初心者にはYONEXが一番いいんじゃないか?」
「え?YONEX?」

「そうだよ、操作しやすいし、簡単にパワーが出せてボールを飛ばしやすいからな…」
「吉村さんがそう言うならそれでいいと思うけど…」

「なら、これにしよう…」
「分かりました…」

支払いは私がカードで払った覚えがある。
確か、29,000円くらいだったと思った。

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