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きのうの夜は
第4章 離婚
その山積みにされた段ボールを義母はただ見ていたのだった。
引っ越し当日は平日で、二世帯住宅の家には誰もいなかった。
義母はその当時、パートで働いていたのだ。
義父もまだ現役でバリバリ働いていた。
義妹はこの日は子供を連れて実家には帰って来なかった。
義弟はどこにいたのか私は知らない。
引っ越し屋さんが来て、沢山の荷物を運んでくれた。
でも、引っ越しの準備が余りにもタイトだったので、持ってこられなかった品物も多かった。
荷物を積み込むとトラックは新しい私の家まで荷物を運んで行く。
私は、ひとり電車に乗り二駅隣の駅で降りる。
駅から15分近く歩いたように思う。
私が借りたアパートは3階建てで私はその3階部分を借りたのだ。
1階は大家さんがちょっとお洒落なバーを経営していてお店になっていた。
引っ越し屋さんはすでに、着いていて私が来るのを待っていた。
新しいアパートの部屋のドアの鍵を開けて入ってみる。
そこには「自由」と言う名の二文字が詰め込まれてあった。
その自由の部屋に沢山の荷物が運び込まれてくる。
たちまちワンルームの私の新しい城は埋まって行った。
私は、自由を手にして心がとても軽くなるのを感じたのだ。
あの忌まわしい二世帯住宅の牢獄から救い出されたのだと思っていた。
でも、まだ離婚届けを出していないことにこの時気づいたのだ。
離婚届けを役所に出しにいかないといけないと思っていた。
その離婚届を出すのはちょっと先になってしまうのだった。