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きのうの夜は
第4章 離婚
その物件は今住んでいる二世帯住宅から二駅先にあった。
会社に行くのにも支障はなかった。
私は、そこのアパートを借りる事にして契約を済ませた。
そして、その後引っ越し屋さんに電話をして自宅に呼び見積もりを取らせた。
引っ越し屋さんが大量の段ボールを置いて行ってくれる。
その段ボールを組み立てては荷物を入れて行った。
その段ボールを見て夫の雅之がこう言ってくる。
「ここを出ていくのか?」
「ええ、出ていくわ…」
こんなやり取りをしたように思う。
義母は義母でその段ボールを見るとこう言ってきたのだ。
「彩夏さんがいなくなると淋しくなるわ…それに、皆が好きだったあの茶わん蒸しも食べられなくなるのね…」
私はこれを聞いて、ちょっと笑ってしまった。
何が、淋しくなると言うのだろう。
私の顔を見るたびに「孫は?孫は?」と繰り返していた義母。
そんな、義母の口から淋しいなどと言う言葉が出てくるのが堪らなくおかしく感じたのだ。
私は、心の中で笑っていた。
この二世帯住宅は親子リレーローンになっている。
私が出て行ってしまった後、そのローンはどうなるのだろう。
そう思ったが、私には関係ないと思っていた。
私は、毎日仕事から帰ると荷物を段ボールに詰めていった。
その段ボールは、部屋の通路に山積みにされていったのだ。