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きのうの夜は
第5章 天川村
私はお茶を飲み干すと、天河神社に行った。
吉村はそんなに興味がなかった様で「部屋で待っているから」と言うとお茶を飲んでいた。

日本三大弁天の宗家とされるこの天河大辨財天社は、水の精、弁財天女を祀ってある。
音楽や芸能の神様としても有名で、芸能人も多く訪れると聞いたことがあった。

神前での能の奉納が毎年行われ、世阿弥も用いたとされる阿古父尉の面、能楽草創期からの価値の高い能面、能装束が多数奉納されている。

ご祭神は中央に弁財天、右に熊野権現(本地仏:阿弥陀如来)、左に吉野権現(蔵王権現)がお祀りされており、神仏習合の形態を今も残している。

私は、手水鉢で手と口を清めると境内に入って行った。
その当時、もう本殿は新しく建て替えられており、昔写真で見た本殿の面影はなかった。

ちょっとがっかりしたが、私は本殿に行き参拝した。
そして、社務所で天河神社にしかない三角形をした“五十鈴”のお守りを買ったのだ。

その五十鈴のお守りは今でも大事に保管してある。
私は、参拝して満足すると民宿に帰った。

民宿と言っても、本当に天河神社の真正面にある民宿だ。
部屋に戻ると吉村が暇そうに寝ころんでいた。

天川村は9月でも暑さを感じさせることもなく、とても快適な陽気だったと思う。
都会ならば残暑が厳しくて仕方なかっただろう。

「吉村さん、ただいま…」
「天河神社はどうだった?」

「うん、とても良かったし満足したわ…」
「そうか、良かったな…」

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