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きのうの夜は
第9章 加仁湯
吉村は私にキスをしてくる。
そのキスはディープキスだった。

私はキスが終わるとこう言ったのだ。

「お願いだからやめて…」
「何でだ?そんなにおれが嫌いなのか?」

吉村はちょっと怒ったように言ってくる。
私は、ただセックスをしたくないだけだった。

吉村とはセックスをしたくないのだ。
この時、強くそう思った。

「吉村さんと、セックスしたくないのよ…」
「それは、俺が嫌いだってことだろ?」

それ以上、私は答えることができなかった。
私は吉村に馬乗りになられた状態で、目から涙がにじんでくるのを感じていた。

「お願い…もう、やめて…」

私は半分涙声になり懇願した。
それを見ていた吉村は馬乗りをやめて私の身体から降りていた。

男は女の涙に弱いのだ。
この時の吉村も同じだった。

「そんなに、俺の事が嫌いなのか?」
「そうじゃないわ…」

この時の私は、まだ自分の本当の気持ちに気づいていなかった。
吉村のことを嫌いではなかったが、本当に好きだったのか分からなかったのだ。

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