この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
きのうの夜は
第10章 距離感
その当時、私は派遣社員で働いていて、毎月のお給料は手取りで25万円程だった。
毎月ちゃんと貯金も出来ていたし、食うに困る様な生活はしていなかった。
吉村と一緒に行った旅行の旅費も自分で出していた。
「金が無いだろう」と言われる筋合いはなかったのだ。
私は、吉村にこう言った。
「今度は、お金で私を縛るの?」
それを聞くと吉村は困惑する。
「そ、そんなつもりじゃない…」
十分に金で縛ろうとしているのは明らかだった。
私は、半ば強引に100万入った通帳とキャッシュカードを渡されてしまった。
だが、私はこの100万を使う事はしなかった。
使えば益々、吉村の束縛は激しくなるだろう。
そう、感じていたからだった。
私は、吉村と距離を置くことに決めた。
毎週末通っていた吉村のマンションにも行く事をやめ、私のアパートにも来ることを断ったのだ。
私のこの処置で、吉村はかなり悩んでいる様だった。
しかし、私の気持ちはもう冷めてしまっている。
別れるのも時間の問題の様に見えた。
この頃だった。
私は、同じグループである後輩が気になるようになったのだ。
その後輩は私よりも3歳年下の29歳の男だった。
その男は吉村の直属の部下だったのだ。