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きのうの夜は
第11章 トライアングル

「た、高山くん…」
「平井さん、俺、もう待てないですっ…」
その時だ。
私のバッグの中の携帯がブルブルと振動して鳴り始めたのだ。
その携帯の呼び出し音を無視するかのように、私たちはキスを繰り返した。
「平井さん、俺、大好きです…」
「わ、私もよ…」
私たちは、物陰に隠れるようにしてキスを繰り返していた。
その間も、私のバッグの中の携帯は鳴り続けている。
「平井さん、電話でなくていいんですか?」
私は、別に出なくても構わないと思っていた。
多分、電話の相手は吉村だろうと想像できたからだ。
この時間になっても電話を掛けて来ない私に怒っているに違いない。
会う回数は減っても、毎日電話を掛けると言う約束はしていたのだ。
今から思えば、実に馬鹿らしい話だと思う。
「別に出なくても大丈夫よ…」
「なら、いいですね…」
そう言うと高山は電話を無視して私にキスを繰り返してくる。
私たちは貪るようにキスをした。
バッグの中の携帯は、その間ずっとなり続けていたのだ。

