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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第6章 伍の巻
 ぼんやりとしていた視界の中で、徐々に周囲の景色が明確な形を取り始める。撫子と萩の描かれた几帳が眼に入り、けして広くはないけれど気持ちよく整えられた室内が見えてくる。贅を凝らしたとはいえないまでも、いかにも女人の住まいらしく、こざっぽりとした中にも華やかさのある作りだ。
 公子は自分が文机にうつ伏せて微睡んでいたことに気付く。どうやら、草紙を読み耽っている最中に、うたた寝をしてしまったらしい。
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