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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~
第2章 壱の巻
 また、相模自身、既に父は十年前に任地で客死し、母もまた亡くなった境遇であれば、他に身寄りとてなかった。今は公子だけが唯一、身内と思える近しい存在であった。
 そんな諸々の事情から、相模はこの聡明ながら、世間知らずの姫を何より大切な守るべき存在だと心得ている。
 今だって、公子は呑気に笑っているけれど、現実には相模の心配は当然のことだ。仮にも今をときめく左大臣藤原道遠の屋敷、警護は十分だとはいっても、どこから誰が見ているかは判らない。
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