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人見知り巨乳女子とロールキャベツ系整体師の恋
第1章 綾子は整体院を見つけた
綾子は疲れていた。
今年の4月から、都内近郊にある小さな不動産屋、「猫間不動産」で経理事務として働く綾子は、毎日8時間に渡るデスクワークと、男ばかりの職場で当たり前のように飛び交う綾子へのセクハラに、心身ともに疲弊していた。
しかし今晩は金曜の夜。
綾子はほぼ毎週末、職場から自宅への帰り道とは反対方向の上りの電車に乗り、「象ヶ谷」駅で下車してすぐの古本屋に行くことにしている。
本の虫である綾子にとって、この古本屋はテーマパークのように胸を躍らされる場所だった。
土日の間に読み終えられるような薄い文庫本を一冊買い、古本屋の主人に会釈をして店を出る。
(この古本屋の主人は、綾子が自分から話しかけられる数少ない人物である)
7月末日の今日は、もう夜の7時になるというのに空は薄暗い程度で、珍しく古本屋から直帰せずに、駅の周りを探索する気分になった。
都心にアクセスのいい「象ヶ谷」駅の向かいに続く飲食店街は、サラリーマン、カップル、大学生と様々な人の活気で溢れ、全員で仕事からの解放を楽しんでいるようだった。
一人で飲食店に入る気はさらさら起きないので、その活気を避けるように、飲食店街の脇の小道に入った。
小道の先に出ると、住宅とアパートと、営業しているのか分からないクリーニング屋、そして、「犬飼整体院」という白地に茶色い文字のシンプルな看板が目に入った。
『営業時間 10:00〜15:00/18:00〜19:30』
営業終了まであと35分。
綾子にしては珍しく、迷うことなく店に入り、受付の呼び鈴を押していた。