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人見知り巨乳女子とロールキャベツ系整体師の恋
第1章 綾子は整体院を見つけた



チリーン

昔ながらの銀色の呼び鈴が鳴った。


受付の奥からかすかにガサゴソと音が聞こえている。


手持ちぶさたな気持ちで店内を見回していると、

「おまたせしました」と、受付のパーテーションが開き、グレーのパーカーを手に持った男性が慌てた様子でやってきた。

もう店仕舞いする所だったのだろう。
すみません、と心の中で呟き、軽く頭をかがめた。


「えっと…初めての方ですよね?
今日はもう営業が終わっちゃうので、30分コースのみのご案内となりますが、よろしいですか?」
そう言って男性は名札を施術服の胸ポケットに付けると、受付台の下から用紙を取り出した。


名札には「相原」と書いてあった。


「あ…大丈夫です」
綾子は答えたが、なぜだか声がかすれ、自分でも曖昧な返事に聞こえた。

「……大丈夫です?」
相原は訊き返すと、少し首をかしげ綾子の目を覗き込んだ。
細い黒縁の眼鏡の奥に、くっきりとした二重の、不思議な魅力のある目がこちらを見ていた。

「はいっ」
今度こそ聞こえるよう(綾子にしては)大きい声で返事をしたが、思わず半歩後ずさりしてしまった。

「それでは、こちらにご記入お願いします。この太枠の欄に」と、
用紙とボールペンを差し出す相原の手は、大きく骨ばってはいるが、色が白くどこか華奢な印象があった。指が細いのかもしれない。


受付台の上で用紙に必要事項を書いている間、受付台の奥に黙って立つ相原からの視線を感じていた。

なるべく早く丁寧に書き終えると、
「はい…」と用紙とボールペンをまとめて返却し、なんとなくまた半歩下がった。

相原はジッと用紙を見つめた後、確認するように綾子に視線を移した。

おそらく彼は一般的には顔が整っている方ではあったが、普段同年代の男と会話をすることのない綾子にとっては、顔の造形に関わらず、無条件に極度に緊張する対象であった。


「じゃあ、30分整体コースでご案内しますね」
相原は綾子の足元にスリッパを置くと、受付横の待合室を横断し、奥の扉を開いた。

綾子は急いでスリッパに履き替え、相原の後に続いた。

二人は『施術室2』と書かれた部屋に入った。
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