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ネコの運ぶ夢
第14章 ネコの秘密
高校、大学と出してもらい、中条の家にはそれなりにお世話になりましたが、私は京介や母、京子、康介といるよりは、使用人といる方が圧倒的に多かったのです。私は家族(と呼べるのかわかりませんが)の顔をほとんど見ることがなく育ちました。

向かい合って食事をした記憶もほぼありません。

私という人間は、中条家の使用人の方々に育ててもらったようなものなのです。特に先代の執事長の鈴木さんや、メイド長の宇佐美さんにはお世話になりました。私の料理が少しは美味しかったとしたら、それは宇佐美さんのおかげです。

市ノ瀬さんに名前を聞かれたとき、私は、小学校の頃に仲良くしていたみーちゃんというネコを思い出しました。私はよくみーちゃんを抱っこして「自分もネコのように自由になりたい」「ネコのように何もしなくても『役立たず』と言われないようになりたい」と願っていました。

だから、「音子」と名乗りました。

美鈴の名は「宇佐美」の「美」と鈴木の「鈴」から借りました。ネコの鈴、から連想したのもあります。

嘘をついてごめんなさい。本当の名前を名乗ると、私がなぜここにいるのか説明しなきゃいけないし、そうすると、中条の家の秘密を話すことになります。家のメンツを第一に考える京介が何をするかわからないと思ったのです。

同じ理由で警察に行くのもダメでした。警察沙汰になったなどと知ったら、京介は怒り狂い、私に何をするか分からなかったのです。本当に殺すぐらいはしたかもしれません。
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