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ふみふみ
第20章 虹の橋

七海ちゃんは驚いたに違いない。
だって、昨日まではまだ普通に話などが出来ていたのだ。

綾子は個室へと運ばれてゆく。
そこで、何人もの医師が訪れては蘇生処置をしてゆくが、綾子の意識は戻らなかった。

でも、一瞬綾子の意識が戻り、七海ちゃんを呼んで何かを言おうとしている様に見えた。
綾子の枕元に近寄りその言おうとしていることを聞こうとする七海ちゃん。

綾子は最後の力を振り絞りこう言った。

「な、七海、…あ、ありがとうね…」

そう言うと糸がプツリと切れたように動かなくなった。
七海ちゃんは叫んだ。

「お、お母さんっ!!」

身体をゆすって名前を何度も呼んだけれども綾子の意識が戻ることはなかった。
七海ちゃんは医師からこう言われた。

「ご臨終です…」

七海ちゃんの瞳から泪が溢れてくるのが分かる。

「お母さん…」

七海ちゃんは綾子の身体にしがみ付いて泣いている。
桜が咲いていてそれがハラハラと散っているのが病室の窓から見えた。

綾子、65歳の春の事だった。
今の時代からしたらとても若いと思う。

余命1年と宣告されていたけれど、綾子は2年も生きたのだ。
綾子の葬儀は父、タケシと同じく大勢の人たちが弔問に訪れてくれていた。

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