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ふみふみ
第4章 ケージ

アタシの名前は暫く保留になった。
この日を境に、アタシはケージに押し込まれることはなくなった。

トイレに行きたくなるとケージに入り、その中のトイレでおしっこやうんちをしていた。
その姿を見ると七海ちゃんはこう言うのだ。

「おチビちゃんは、とてもおりこうさんなのよねぇ…」

でも、猫は砂を見ると本能的に全てがトイレに見えてしまう。
だから、公園にある子供が遊ぶ砂場などは、猫にとっては大きなトイレになってしまうのだ。

公園の砂場は恰好の猫のトイレだと言える。
七海ちゃんはそれを知っていたのだろうか。

アタシはケージに入れられなくなると嬉しくて毎日部屋中を走り回って、色々な物を落としていった。
仕事から七海ちゃんが帰って来ると、いつも部屋の中はグチャグチャになっていた。

その散らかった部屋をいつも七海ちゃんは片づけていたのだ。
アタシは毎日がとても愉しかった。

でも、七海ちゃんはアタシが散らかした物をいつも片づけるのにため息をついていた。

「おチビちゃんがケージに入ってくれないと本当に困るわ…」

そんな事を言っていたけれど、アタシは部屋を散らかすのがとても愉しかったのだ。
それをやめることはできなかった。

その後、アタシはケージには入る事はなかった。
アタシは毎日、毎日七海ちゃんの部屋の物を倒して落としてゆく。

それを、七海ちゃんは毎日、毎日、片づけてくれた。
アタシは毎日が愉しくて、愉しくて仕方がなかった。

アタシは今日も部屋中をダダダダっと走り回っている。

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