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ふみふみ
第1章 プロローグ

智也はその当時、七海ちゃんと同じ量販店で支店が違うところに勤めていた。
その支店は千葉支店だった。

七海ちゃんは横浜支店だったのだ。
量販店は水曜日が定休日だった。

その定休日を利用して七海ちゃんは引っ越すことを決めた様だった。
七海ちゃんはその日の為に少ない荷物を必死でまとめて行った。

母、綾子には引っ越すことを話してあったが、父、タケシには引っ越すことを話していなかった。
それは、本当に綾子と弟、真司と七海ちゃんだけの秘密だったのだ。

タケシは七海ちゃんが家を出たと知ったら激怒するに違いなかった。

そして、引っ越し当日…。
タケシが仕事に行っている時に智也に迎えに来てもらうことになった。

七海ちゃんは、ありったけの洋服を詰めた大きなバッグに、カラーボックス1つだけを持って家を出た。

智也は七海ちゃんを車に乗せると引っ越し先へと車を走らせて行く。
冷蔵庫や洗濯機は新しく引っ越す家に届けてもらう様になっていた。

こうして引っ越しは父、タケシに知られずに無事に終わったのだ。
七海ちゃんの新しいアパートは8畳のワンルームだった。

トイレとバスは3点ユニットになっていてトイレとお風呂は一緒だった。
洗濯機置き場は部屋の中にある。

冷蔵庫を置くスペースもちゃんとあったのだ。
引っ越してきて七海ちゃんは思っていた。

「もう、あの父親と顔を合わせなくても済むのだ…DVからも逃れられた…」

あのまま実家にいたら、間違いなく七海ちゃんは父、タケシを殺していたかも知れなかった。

でも、残してきた家族が気になっていた。
しかし、弟の真司がこう言ってくれたのだ。

「七海ちゃん、母さんは俺が守るから大丈夫だよ…安心して…」

それを聞いて七海ちゃんはホッとしていたのだ。
こうして、七海ちゃんの一人暮らしが始まった。

七海ちゃんがアタシと会うのはもう少し先の話になる。

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