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ふみふみ
第11章 里親
そう言うと電話は切れた。
七海ちゃんはこの話を聞くと、一気に食欲が失せてしまった様だった。
引っ越したばかりでお金はないからまた引っ越す訳にはいかない。
でも、アタシを処分することはできない。
七海ちゃんは深く悩んでいる。
このアパートに引っ越してこなければ、アタシとずっと一緒に暮らせたかも知れないと思っていた。
こんなことになったのも、智也のせいだと思い始めていた。
確かに、半ば強引に引っ越しを勧めてきたのは智也だったのだ。
七海ちゃんは、ご飯も食べずにアタシを抱っこして抱きしめていた。
「フミ、もう一緒に暮らせないかも知れないわ…私、哀しい…」
そう言うと七海ちゃんは泪を流すのだ。
アタシも哀しくて七海ちゃんに鳴いて見せる。
すると、七海ちゃんはアタシの頭を優しく撫でて、お尻をポンポンと叩いてくれる。
そのお尻ポンポンがアタシはとても嬉しくて喉を鳴らした。
「フミぃ…」
七海ちゃんはアタシをまた抱きしめて来た。
その時だった。
玄関の鍵が開けられて誰かが入って来た。
誰かと思ったら智也だったのだ。
「七海ちゃん、ただいま…」
智也はさっき不動産屋さんから掛かって来た電話のことを知らない。
七海ちゃんは智也が部屋に入って来ると怒ったようにこう言うのだ。