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トライ アゲイン
第9章 目覚めの時
一台の車が交差点に侵入してくる。
見通しの良い道路なので、車は快適に走行していた。
そこへ急に安祐美が脇から飛び出して来たものだから、車は慌てて急ブレーキをかけた。
『ぶつかる!!』
安祐美の脳裏に25歳の自分が車に跳ねられた記憶が鮮明に甦る。
だが、車のドライバーの反射神経がよかったのか、急ブレーキをかけた車は安祐美を跳ねる寸前で停車した。
思わず安祐美はヘナヘナと腰が抜けたように道路に崩れ落ちた。
「バカ野郎!!死にたいのかよ!
赤信号で飛び出す奴があるか!」
ドライバーは血相を変えて交差点の真ん中で尻もちをついている安祐美を罵倒した。
ドライバーにはぶつかった衝撃もなかったので
安祐美が無事だという確信があったが、
倒れこんで起き上がらない安祐美が心配になって車を降りて彼女の元へ駆け寄ってくれた。
「大丈夫か?怪我なんてしていないか?」
「ご、ごめんなさい…」
ドライバーに抱き起こされて
ようやく安祐美はお詫びの言葉を口にした。
「とにかく病院に行こう」
車とは衝突してはいないようだけど、
きっとショック状態なのだろうと、
運転手は救急車を手配しようとしていた。
「ホントにごめんなさい!
私、大丈夫ですから!」
立ち上がって頭を下げようとしたら
フラフラとめまいがしてドライバーの腕の中に崩れ落ちてしまう。
「とりあえず、車で家まで送るよ
さあ、車に乗って!」
有無を言わせず安祐美を助手席に乗せて車は発進した。
「本当に大丈夫かい?
病院に行かなくてもいいのかな?」
「ええ、どこも当たっていませんし…
少し興奮していたからめまいがしただけですし…」
なんにせよ、君を家まで送らせてもらうよ
住所、言えるかい?
安祐美が告げた住所をカーナビに打ち込んで
彼女を乗せた車は自宅に向かい始めた。