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トライ アゲイン
第9章 目覚めの時
最初は「いや、僕はこれで失礼するよ」と
自宅に招かれるのを辞退していた男だったが、
せめてコーヒーぐらい召し上がっていって下さいなと安祐美が執拗に招くものだから「じゃあ、コーヒーだけ…」と車を駐車して自宅に上がり込んだ。
「さあ、どうぞ上がってくださいな」
玄関先にスリッパを並べて男を招き入れる。
「すいません、じゃあ、お言葉に甘えて失礼します」
そのように安祐美に告げてから
家の奥に向かって「こんにちは!お邪魔します」と
家人に失礼のないように大きな声で挨拶をした。
「うふふ…大丈夫ですよ
うちは共働きなので誰もいませんから」
「えっ?そうなんですか!
それを先に言ってくださいよ
君と二人だけというのは良くないですよ
やっぱり僕はここで失礼させていただきます」
脱ぎかけた靴をもう一度履き直そうとするのを
安祐美が止めさせた。
「お礼をせずに帰してしまっては母に叱られます」
そういって安祐美は男の腕に手をかけた。
その時だった。
まるで電気ショックのように体がビリビリと痺れた。
『えっ?、なにこれ?』
安祐美は驚いたが、電気ショックを味わったのは安祐美だけのようで、男は何も感じなかったかのように「それじゃ…少しだけお邪魔します」と家に上がり込んできた。
「コーヒー…ブラックでいいですか?」
男を応接間のソファーに座らせ、
ドリップにコーヒー豆をセットしながら安祐美は男に尋ねた。
「ええ、ブラックでかまいません」
家には誰もいないとわかっているのに
男は楽な姿勢を取らずに
会社訪問でもしているかのように居ずまいをただした姿勢を崩さなかった。