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トライ アゲイン
第9章 目覚めの時
「あ、どうぞ、お楽になさってくださいね」
安祐美が気を使ってそういってあげると
「君、高校生だよね?
なんだか口調といい仕草といい、なんだか妙に大人びているね」と、疑問に思ったことを口にした。
大人びている…
そう、それもそのはず、見た目は高校生だけれど、
安祐美の心はれっきとした25歳の大人の女なのだから。
「大人びています?そうなんですよ、よく誰からもそう言われます」
コーヒーカップにブラックコーヒーを二つ用意して一つは男の前に、そしてもう一つは対面に置いて安祐美は彼と向い合わせでテーブルに着席した。
「学校で起きたイヤなことってなんだい?
よかったら僕に話してごらんよ
まともに答えてあげることは出来ないかも知れないけど、こういう事って誰かに打ち明けると案外と気持ちが楽になるもんだよ」
安祐美は彼が、すごくまともなことを言う大人の男性だと思った。
そして、笑われるのを覚悟でパラレルワールドに迷いこんでしまったかもしれないと打ち明けた。
「へえ~…パラレルワールドねえ…
で、君は元の世界とやらに戻りたいわけ?」
安祐美の話を聞いても吹き出す事もせずに
彼女がまんざら夢物語を話していると疑わないで真摯に答えてくれた。
「そう…戻れるのなら戻りたいですけど…
でも、戻れないのならば、出来るだけ元いた時間と同じように戻したいの」
「うん、言いたいことはわかるよ
でも、無理なんじゃない?
君だって気づいているんだろ?出来事がすべて違うということに」
「そっか…やっぱりそうなのかな…」
彼に話してみて良かったと安祐美は思った。
一人で悶々と悩むよりかは
こうして問題を共有することで肩の荷が少しだけ軽くなった気がした。