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トライ アゲイン
第9章 目覚めの時
「さあ、もう少し安祐美さんを休ませてあげましょう」
医師の言葉に「そうですわね…目覚めてくれたので私も一安心でゆっくりできそうだわ」そう言って母の由美子は梨田の手を握った。
安祐美は認めたくなかったが、
そんな安祐美の気持ちなどお構いなしに
母の由美子と彼女が夫だと呼ぶ梨田が仲良く手を繋いで病室から出ていった。
「さて、君はもう少し安静にしておいた方がいいよ」
「あの…先生は本当にお医者さんなの?」
「おかしな事を言う人だなあ
医者でなければ、この格好はコスプレだとでも言うのかい?」
医師はそう言って白衣の襟をピシッと音を立てて自慢げに安祐美に見せつけた。
「私は交通事故にあったのよね?」
確かに同僚の小向さんにラブホテルからの朝帰りの途中でプロポーズされて…
思いがけないプロポーズだったから交差点の真ん中で呆然としちゃって…
その後、確かに車に撥ね飛ばされた記憶が残っている。
その時の衝撃もしっかりと覚えている。
右腕と右足に激痛が走ったのだから無傷なんてあり得なかった。
「完璧に車に跳ねられたのよね?」
「それは違うな、寸前のところで車は停車したからね、当たっていないのは確かだよ。なんたって車を運転していたのは僕なんだから
当事者の僕が言っているんだから間違いないよ」
さあ、もう少しだけ眠りなさい
そう言って医師は安祐美の体に掛布団をかけてくれた。