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処女(はじめての)浮気/お持ち帰りされた若妻
第4章 一線を越える

◇◇◆◆◇◇◆◆◇◇
ホテルの前でタクシーを待つ。
無言のまま、二人の間に冷たい夜風が通り過ぎた。
遠くにヘッドライトが近づいてくる。
「来たよ」レンがつぶやく。
ミキは頷きもせず、ただ前を見つめていた。
タクシーが停まり、ドアが開く。
「じゃあ、元気でな」
「……うん」
ミキは一言だけ残して、後部座席に乗り込んだ。
ドアが閉まる音が、二人の夜を切り裂いた。
タクシーが走り出す――――
ミキは一度も後ろを振り返らなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
タクシーのシートに沈み込み、ミキはため息をついた。
(はぁ……また恥ずかしいくらい乱れてしまった)
太腿の内側に残る感触が、その事実を生々しく思い出させる。
(あれ?レンと会う前にも同じこと思ってたような……)
自嘲するように笑い、窓の外へ目をやる。
流れていく街の灯り。変わらない夜の風景。
でも、自分の中だけがぐちゃぐちゃに乱れている。
「そういえば、電話番号も聞いてなかった」
思い出したように呟き、小さく首を傾げる。
(まあ……それでいいのかもしれない)
もう二度と会わないかもしれない人。
そのくせ、まだどこか身体の奥がじんわり熱い。
ため息がまたひとつ、窓に小さな曇りを残した。

