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第12章 探偵ナイトジラーフ

「どうだろうな」

と、濁して、

「気になる。千佳子さんに勧めて、感想を聞いてみようかな」

と、話す智佳。内心で頑張ってくれとエールを送りつつ、俺様は智佳との第二ラウンドに突入した。

千佳子さんか…。そうだな。いい響きだ。そう、俺たちの世代までは、『〇〇子』が多かった。昭和だからかもしれないが…。智佳と千佳子は同じ年齢だが、この世代だと、圧倒的に『〇〇子』は少ないはずだ。

ホストをしていても、最近の人妻は、聖華だとか、麗香だとか、美空だとか、陽菜だとか、郁だとか、凛だとか、澪だとか、漢字２字か１字が増えて、〇〇子なんて名前は滅多にいない。

と、俺様に金を落としてくれる人妻の名前を並べつつ、顔を思い出したが、千佳子は、名前だけじゃなくて、顔も美形だし、品性もいい。

そもそも、人妻なのにホスト通いするような女は碌でもない。って、ホストの俺様が言っていいことではないが、男として、旦那に対する不満を愚痴る女っていうのは好きになれない。まあ、中にはとんでもない男がいて、さすがに同情することも稀にはあるが、心のどこかで、そんなつまらない男に引っかかった女にも問題があるんじゃねぇか？と思うこともあるが、そういう女だからこそ、俺様にとっては良いカモでもあるわけだが…。

『ホストなら、それこそ、千佳子を口説けよ』とか、思うかもしれないが、ホストは万能じゃない。ホストが口説ける女には、共通項があるんだぜ。それは、『欲求不満』さ。別に性的なことばかりじゃないぜ。当然、性的欲求は最大の欲求だろうが、承認欲求もあるさ。旦那と毎晩セックスをしていても、旦那が自分を欲求の捌け口としてしか見ていないとわかっている女は欲求不満さ。

その点でいくと、千佳子は難しい。確かに、『いい女』だと思う。その『いい女』の要素がホストからは一番遠い位置にあるのさ。

夫一筋。夫を愛してやまない。夫のために一生懸命。夫に献身的。当然、貞操観念はダイヤモンドより硬い。どう考えてもホストと縁はない。

ホスト稼業30年。所謂『いい女』には出会えていない。金払いのいい、感度のいい、気持ちいい女は、タラフク食ってきたが…。そう、Xチームに入って、最初の頃は、ホストと縁の薄い女子高生や女子大生とやるのが面白かった。特に田舎出の初心な女子の反応が面白かった。